学習用のシミュレーションです。 実機の配線・通電作業は、電気工事士などの資格と社内ルールに従ってください。作業前は必ず電源(MCCB)を切り、ロックアウト(施錠・表示)と検電をしてから触ります。
三相 200V の動力回路は、制御回路(AC100V)より危険です。電流が大きく、短絡すると大きな火花が出ます。
吊り荷の下には入りません。巻き上げ機・クレーンは、吊り上げ荷重によって法令(クレーン等安全規則など)の対象になり、設置・点検・運転の資格が要る場合があります(要確認)。
主回路(動力 三相 200V)
MC-F と MC-R で2本の線を入れ替える
電気が来ている線電気が来ていない線
制御回路(AC100V)
インターロックとリミットスイッチ
電気が来ている線電気が来ていない線
よくある間違いを試す
ボタンを押すと、その間違いを入れた回路になります。「正しい回路に戻す」で元に戻ります。
正転・逆転の仕組み — このページの回路
- 回る向きを変える 三相モーターは、3本の線(R・S・T)のうちどれか2本を入れ替えると逆に回ります。MC-F(巻き上げ)は R→U・S→V・T→W、MC-R(巻き下げ)は T→U・S→V・R→W とつなぎ、R と T を入れ替えています。
- インターロック(相手の b接点) MC-F と MC-R が同時に入ると、R と T が MC を通してじかにつながり短絡します。だから MC-F のコイルの前に MC-R の b接点 21-22、MC-R の前に MC-F の b接点を入れます(基礎2〜 の CR1・CR2 と同じ考え方)。実機は、2台の MC を機械的にも押さえ合う可逆形の電磁開閉器を使うのが一般的です(形式は要確認)。
- リミットスイッチ(LS) 上限 LS2 の b接点は巻き上げの回路だけに、下限(原点)LS1 の b接点は巻き下げの回路だけに入れます。上限で止まっても、巻き下げはできます。上限は「巻き過ぎ」を防ぐ大事な装置です(巻過防止装置・要確認)。
- サーマルリレー THR モーターに流れる電流が大きすぎる状態が続くと、THR の b接点 95-96 が開いて止めます。97-98(a接点)で「過負荷」の表示灯を点けます。設定はモーターの銘板の定格電流に合わせます(要確認)。
- 向きを変える前に一度止める この回路は、動いている間は反対のボタンが効きません(インターロック)。PB停 で止めてから押します。重い荷を急に逆転させると、機械と荷に大きなショックがかかります(基礎6 の「一呼吸」)。
- ブレーキ 巻き上げには、電気が切れると効くブレーキ付きモーター(無励磁作動形)を使います。電気が切れても荷が落ちないようにするためです(形式・ブレーキの力は要確認)。
大事:実際のホイストは、押している間だけ動く(寸動)操作が一般的です。このページは「リミットスイッチで端まで動く」仕組みを学ぶため、自己保持で動かしています。実機の操作方法は、法令・メーカーの指示・社内ルールで決めます(要確認)。
制御盤の配線例(図解)
上の主回路・制御回路を、実際の盤に組んだときの一例です。部品は富士電機などでよく使われる形式の例です。端子の並び・形式の末尾(定格・コイル電圧)は、メーカーのカタログと取扱説明書で確かめます(要確認)。ボタンを押すと、電気が通る線が光ります。
主回路(動力)黒制御回路 AC100V 黄接地 緑(緑/黄)電気が通っている
- ① MCCB(配線用遮断器) 富士電機 G-TWIN の BW32AAG-3P(3極)の例。盤の入口で、主回路と制御回路の両方を守ります。富士電機の資料では、SC-NEXT の電磁開閉器と組み合わせる遮断器の表に BW32AAG が載っています。定格電流(形式の末尾)は、その表とモーターの電流・電線の太さから決めます(要確認)。
- ② 可逆形電磁開閉器 富士電機 SC-NEXT シリーズの SW09XAR の例(現行品。旧形式 SW-03RM の後継)。200-240V で 2.2kW までのモーターに使える可逆形で、電磁接触器は1台ごとに補助接点 1a1b(自己保持に a、インターロックに b)。サーマルリレーは TR18X2(2素子・1a1b 独立補助接点・手動/自動リセット切替え・旧 TR-0N の後継)で、モーターの定格電流が入る整定範囲を選びます(下の機材表に、この計算の例で選ぶ範囲を出しています)。コイル AC100V は形式の記号で指定します。可逆用のインターロックユニット(SZ3RM)と主回路の渡りキット(SZ3RW09X)が用意されていますが、SW09XAR に組み込み済みか・端子番号は取扱説明書で要確認。
- ③ 制御用トランス 200V → 100V(容量は MC のコイル・表示灯の合計から。メーカー未定・要確認)。1次側(200V)にも保護を入れるのが一般的です(要確認)。
- ④ CP(サーキットプロテクタ) 富士電機 CP30F シリーズ(制御回路用)の CP30FS-1P003(1極 3A)の例。AC100V の制御回路を守ります(旧形式 CP31FS/3 は生産中止)。
- ⑤ 端子台 TB1=動力(U・V・W・接地 E)、TB2=制御(線番で並べる)。機械側(モーター・リミットスイッチ)への線は、必ず端子台を通します(基礎1〜9 では線番で直接追いましたが、機械側への線が増えるのでここから使います)。
- ⑥ 扉の機器 押しボタン 富士電機 AR22 シリーズ(PB上・PB下=a接点、PB停=b接点)、非常停止 AR22V0R-01R など(きのこ形・押しロック・ひねり戻し・1b・赤。販売店の情報・要確認)、表示灯 DR22 シリーズ(LED・AC100V)。扉への線は束ねて、ちょうつがい側から曲げに強い形で渡します。
- ⑦ 機械側 ブレーキ付きモーター(整流器は端子箱の中が多い)、リミットスイッチ LS1・LS2(オムロン 形WL などの例)。モーターと盤は必ず接地します(200V なら D種接地・要確認)。
ブレーキ付きモーター — 選び方・仕組み・配線例
- ブレーキ付きを選ぶ場面 巻き上げ(吊り荷)は必ずブレーキ付きです。ほかに、坂や傾きのある搬送、止めた位置を保ちたい所、惰性で行き過ぎると困る所(リミットスイッチで止める台車など)、非常停止ですぐ止めたい所で使います。平らな所のコンベヤ・台車で、惰性で少し進んで止まってよい場合は、ブレーキ無しを選ぶこともあります(用途ごとに要確認)。
- ブレーキの力(制動トルク) モーターの定格トルク以上が一般的です。巻き上げでは、荷の重さで回されるトルクを確実に止めて保持できることが条件です。クレーン・ホイストは法令(構造規格)でブレーキの力に決まりがあります(要確認)。下の計算表の「ブレーキ」の行に、この例の目安を出しています。
- どう動くか(無励磁作動形) ふだんはばねがアマチュア(鉄の板)を押し、ライニング(摩擦材)の付いたディスクをはさんで止めています。モーターに電気が入るとブレーキの電磁石にも電気が入り、アマチュアを引き寄せてディスクが自由になります(解放)。電気が切れると、ばねの力で止まります。停電でも荷が落ちない「フェイルセーフ」の仕組みです。
- 配線の基本 ブレーキのコイルは直流で動くものが多く、モーターの端子から整流器(交流→直流)を通して電気を入れます(整流器はモーターの端子箱に付いていることが多い・形式で要確認)。切り方は2つあります(下の図で切り替えられます)。
- 交流側切り(普通制動):整流器の入力をモーターの端子につなぐだけ。配線は簡単ですが、MC が切れてもモーターに残る電圧でしばらく電気が流れ、効くまでに遅れが出ます。
- 直流側切り(急速制動):整流器とコイルの間の直流の線を、MC の補助 a接点(MC-F と MC-R を並列)で切ります。すぐに効きます。巻き上げでは直流側切りを勧めるメーカーが多いです(要確認)。補助接点が足りないときは補助接点ユニットを足します。直流を切る接点には、接点を守る部品(サージ吸収)が要る場合があります(メーカーの指示で要確認)。
- インバーターで動かすとき ブレーキの電気をインバーターの出力(モーターの端子)から取りません。低い周波数では電圧も低く、ブレーキが開き切らないためです。別の電源から、インバーターの「運転中」の信号で入れ切りします(基礎11 で扱います・要確認)。
- 点検 ライニングのすり減り、すき間(ギャップ)の調整、手動開放レバー(電気なしでブレーキを開く)は作業の後に必ず戻す、をメーカーの手順と社内ルールで行います(要確認)。
モーターと減速機の選び方(計算の例)
条件を選ぶと、必要な力・モーターの出力・減速比・減速機のトルクを計算します。結果は上の巻き上げ機の動き(速さ・過負荷)にも使います。数値は考え方を学ぶための例で、実機はメーカーの選定資料で確かめます(要確認)。
同じモーターで台車を引くと(横に引く例)
上の巻き上げ機を横向きに置き、ワイヤーで台車を引く例です。モーター・減速機・ドラム径・効率は上の計算と同じです。荷を持ち上げる時は重さ全部を支えますが、平らな所を転がす時は「転がり抵抗」と「動き出しの加速」の分だけで済むので、同じモーターでずっと重い台車を引けます。数値は考え方を学ぶための例です(要確認)。
早見表(いまの車輪・傾き・動き出しの時間で。モーターは上の計算と同じ)
| 台車の質量 | 同じ速さでの負荷 | このモーターで出せる速さの上限 | その時の減速比 | 電気を切った後、惰性で進む距離 |
|---|
ここでの考え方:走り続ける力 =(μ + 傾き)× 質量 × 9.8、動き出しの力 = 質量 × 速さ ÷ 動き出しの時間。走っている間はモーターの定格まで、動き出しの短い間は定格の約1.5倍まで使えるとしています(起動の時の力・インバーターの過負荷耐量はメーカー資料で要確認)。ワイヤーは引けても押せません。モーターを止めても台車は惰性で進み、ワイヤーがたるみます(止め方・ストッパー・ワイヤーの巻き込みは要確認)。車輪をモーターで回して走る台車は、車輪が滑らない力までしか引けません(車輪にかかる重さと床の摩擦で決まる・要確認)。速さの上限は、モーターよりも「人の安全・止まれる距離」で決めることが多く、人のいる所では歩く速さ(約 60〜80 m/分)より十分遅くします(社内ルール・法令で要確認)。
使っている機材
このページの部品はすべて「仮」(一般的な例)です。端子番号・形式・定格はメーカーのカタログで確かめます(要確認)。
記号は JIS C 0617 に準じた簡略表示です(要確認)。端子番号は一般例です:MC のコイル A1-A2、補助接点 a 13-14・b 21-22、サーマルリレー b 95-96・a 97-98、リミットスイッチ・押しボタンは一般例(要確認)。制御回路は、MCCB の後ろから制御用トランス(200V→100V)と CP で AC100V を作る例です(実機の制御電圧・トランスの容量は要確認)。表示灯 PL上・PL下 は MC のコイルと並列につないでいます(MC の補助接点を増やして点ける方法もあります)。モーターの回転数(4極で 50Hz 約1450・60Hz 約1750 回/分)・定格電流・効率は例で、銘板とカタログで確かめます。画面の動きは見やすいよう実際より速くしています(巻き上げの速さ×4、サーマルリレーが切れるまでの時間も短くしています)。インバーターで速さを変える・ゆっくり起動する方法は基礎11 で扱います。